スペシャルティコーヒーとは ④(酸/ Acidity の重要性)
ここで、酸と甘みの関係について少しだけ。
「酸っぱい」コーヒーが嫌いという方が多くいらっしゃいます。
日本人は特に酸に敏感な民族のようで、「酸っぱい」によく反応するようです。
しかし、これはコーヒーに限ったことではないと思うのですが、味のバランスを考えるとき酸は非常に重要な役割を担っています。味覚の骨格をなすと言っても過言ではありません。
酸が全くゼロとなりますと、味はぼけますし、甘みも感じにくい。
酸がないものは、平板(のっぺらぼう的な味)で、何の面白みもない、満足感をえられないものになります。
コーヒーにとって、「甘みと良質な酸は表裏一体のもの」と申し上げてよいと思います。
では何故多くの人が「酸っぱい」コーヒーを嫌うのでしょうか。これは、「悪い質の酸」を無意識に評価していると考えられます。
例えば、柑橘類に含まれる酸、グレープフルーツやオレンジなどの酸に悪い印象を持つ方は少ないのでないでしょうか。
柑橘類の酸は明るく、さわやかです。
これらの酸は「質の高い」酸です。
料理のソースなどでも、柑橘類の果汁を加えたり、シェリー酢やバルサミコ酢などをつめたりして酸をコントロールしていることがありますね。
酸をコントロールすることによって、甘みを引き出すと申し上げても良いかもしれません。
もちろん料理の場合にはこれに加えて食材そのものの味、塩味、様々な香辛料など他の調味料あるいは火力とのバランスになると思います。
良質なチョコレートなどもカカオの含有率が高くなるほど、良い酸の成分が多く感じられる傾向にあります。
ワインも酸についての評価が重要です。良い酸が含まれないワインは味のピンがぼけた感じになります。赤でも白でもロゼでも泡でも、良質なワインには必ず良質の酸が含まれています。
日本酒にだって酸はありますね。
良質の酸は、味に厚み、立体感、いきいきとした感覚(Liveness)ときに複雑さを与え、人間の味覚に対する官能の満足感を演出します。
このように、酸には「良い質」の酸と「悪い質」の酸があるのです。
コーヒーも同じで、この「酸の質」が重要です。焙煎工程がうまく進んだことが大前提になりますが、スペシャルティコーヒーに含まれている酸は質が高い(良い)酸です。
明るく、さわやかな印象です。
オリジンによっては本当にストレートに例えばレモンやグレープフルーツ、あるいはオレンジなどを連想させる酸もあるほどです。
スペシャルティコーヒーの世界ではこれらの「良質な酸」を感じることは、そう難しいことではありません。
「酸っぱい(質が悪い酸)」と一口に酸を毛嫌いせずに、スペシャルティコーヒーの「さわやかで、明るい印象(質の高い酸)」を堪能してみませんか。
きっとその中にかくれている自然なコーヒーの元来持っている「甘さ」にも気づかれるこtと思います。