友里 征耶 氏との会食 ③ プロの目線だけでよいのか?
どんな業界でもあることですが、ある評論をみて「分からないくせに、よくこんなことをいうなあ。」というプロ側の声はよく聞く話です。
私自身も愚痴にも近い形で、同じような一人言をよくいいます。
ではプロでなければ、評価、評論はしていけないのでしょうか?
勿論、そんなことはないと思います。「よく事情を知っているプロ、あるいはプロに近い方だけしか評価、評論できない」というのは一見正論に見えるのですが、これには重大な落とし穴があります。
例えば、顧客満足度調査という評価方法がありますね。これは、プロの評価や自社内調査だけでは「ユーザーの本当の気持ちはわからない」という考えから始まったもので、あくまでも一般顧客に対するアンケートなどで調査をします。
あるいは、ユーザーの視点に立って、商品の使い勝手などを評価します。
(作った側は、ユーザーはまさかそんな使い方はしないだろう、こんなことくらい当然分かるだろうと思い込み設計していることが案外多いのです。たいていの場合、設計をしているのはプロの技術者ですね。技術者が悪いのではなく、人間は思い込み、間違いを犯す動物だということを認識することが大切です。結果としてそういう誤った設計がユーザーの評価を落とす原因になったりします。)
例えば、料理がプロの料理人(あるいはその経験者)しか、クルマが自動車メーカーの社員しか評価、評論してはいけないとなると大変な世の中になってしまうでしょう。(スゴイ商品が世に出そうです)
プロやプロと同等の方の評価、評論はプロからすれば共感できる部分は多くなる可能性が高いですし、それはそれで言うまでもなく有益なものです。しかし、視点が違うので、それらの評価、評論は単純な比較はできないということだと思います。
通常はお客様の99%以上が素人なのですから、その素人の意見は本来、お店にとって大変重要なものであるはずです。
少し見方を変えれば、友里さん(他の評論家の多くも)は食べ手としては(ワインなどお酒を含め)相当にご経験を積まれている方ですが、プロの料理人ではありませんので、そういう意味においては、あくまで素人なのです。
味の評価は官能評価でありまして、個人の趣味、嗜好が必ず入ります。100%の客観性のある評価は不可能ですし、仮にできたとしてもあまり意味のないものかもしれません。
そういうことを大前提にして、記事をみる必要があると思います。
また、アンチの方もそれなりにいらっしゃる友里さんですが、私の周辺の信頼できる料理人の方、私などよりよほど食べ込んでいる食通の方など、友里さんの活動に共感をお持ちの方も多くいらっしゃいます。
なぜかといえば、私を含め食べ手の方の多くは、色々なメディアを信じて訪問したお店で、とても悔しい、多くの失敗を経験し、散財してきているからです。
④へ続く
*本文と画像は関係がありません。(子羊のロースト:於 ミモレット)