湯島 くろぎ にて
ずっとアップしそこねていたのですが、どうやら旬の話題となりそうな感じですので、たまには訪問記のようなものを。
私は仕事柄(本当は自分の趣味なんですが)、(とくに仏、伊)のレストランを訪問する機会は多いと思うのですが、和食に関してはそれほど多くの経験がありません。
そこで、半年ほど前にその道にお詳しい方にお願いしてお連れいただきましたのが、湯島にあります「くろぎ」という和食のお店です。
和風建築の一軒家を和食店へ改装してお使いになっているようです。
1階は白木のカウンターメインで、2階はテーブル席。
なかなか予約がとれない(通常6ヶ月まち)そうで、貴重な体験をさせていただきました。
板長の黒木 純さんはまだ30半ばくらいでしょうか、若くて、勢いのある感じです。
くろぎの料理の内容ですが、とにかく品数豊富です。
基本的にお任せのコース一本だけです。
カルトとして選ぶ楽しさはありませんが、信頼できるお店に最高のメニューを「お任せ」するという安心感はありますね。
黒木さんがその日の仕入れで考える渾身のお任せメニューというのが基本です。
和食の場合、フレンチ、イタリアンと比較した場合、こういった形式をとるお店が多いように思います。コース一本ではないにしても、松竹梅など数種類のコースから選択するという形式もありますね。
お店としても、お任せ一本に絞ることによって、最高品質の素材仕入れに集中し、ロスを最小限にとどめることができると思います。
その分、低廉なコストで素晴らしい料理が食べれるとなれば、こういったメニュー構成も良いと思います。
合理的な仕入れで浮いたコストを利益にするのか、出来る限りお客様へ還元していくのかというオーナーの考え次第で、食後感、いわゆるコストパフォーマンス(Value for Money)が大きく左右されるのです。
逆に言えば、同じようなコース料理メインの合理的な構成であったとしても、オーナーの考え方次第では、全く食後感の悪いものになってしまうことも十分あり得るということです。
私たち食べ手はこの辺を気をつけなければなりません。
結局はお店は人であり、オーナーの考え方次第ということだと思います。
お任せコース一本でありますが、勿論、食べられない素材などがあれば、事前に相談のうえ、別のメニューを作っていただくことも可能です。
(昼は行ったことはないのですが、鯛もご飯もおかわり自由の鯛茶漬け定食¥1,000だけの営業です。)
私でも、お腹いっぱいになりました。
お酒の写真は撮り忘れましたが、八海山酒造のビール、シャンパーニュ、そして日本酒を料理に合わせて黒木さんにお任せしました。
日本酒は言うまでもなく、シャンパーニュやワインリスト(グラスもあり)もフランス料理店並に充実しておりました。
料理はどれも、旬の素材の頂上もしくはそれに近い素材を用い、日本料理の手をかけています。
黒木さんは、東の和食の最高峰の一つと思われる京味 西 氏の下で修行をされたとのこと。
でも、日本人のための和食の締めは、やっぱりこれですよね。↓
ミシュラン一つ星のお店ではありますが、こういったベーシックなものをさりげなく、すっと出されるところにセンスを感じます。
香の物、お味噌汁。
ごくシンプルな家庭でも日常みられるような料理。
写真で見れば、ご覧の通りなんということはない誰でもできそうな料理に見えます。
しかし、ここにかけられているものはプロの料理人にしかできない工程や素材がつかわれています。
もっとも、シンプルなものほど目に付きやすいということもありますね。
炊き込みご飯は勿論その場で、土鍋にて炊いてくれます。
食べきれない場合はお土産としてお持ち帰り可能。
そして最後にわらび餅。
わらび餅もカウンターで黒木さんが作ってくれます。黒蜜が添えてあります。
作り立てのわらび餅、その食感がたまりません。
つかわれている素材、かけている工程の質、結果として供される料理の種類、そして味。
くろぎさんやおかみさんの行き過ぎたところがない笑顔のサービスも素晴らしい。
気になることが全くない訳ではありませんが、総合的にバランスのとれている非常に優れた和食店と言えると思います。
勿論、後先を(財布の中身)考えず、その場で次回の予約を入れさせていただいたことはいうまでもありません。
(先日行ってきたのですが、このときは鱧の季節で、大変おいしい鱧料理を食べさせていただきました。鱧は骨切りが必要な魚ですが、なかなか本当に美味しいと思えるものに出会えないものの一つと感じておりますが、さすがでした。)
ところで、今晩からふたたび始まる、料理の鉄人改めアイアンシェフ。
番組内で発表される新たな鉄人の顔ぶれが楽しみです。
*アイアンシェフのオープニングで和の鉄人として、くろぎのオーナー、料理長 黒木 純さんが紹介されました。
テレビの力は良くも悪くも甚大です。黒木さんが今のペースを崩すことなく、素晴らしい料理、サービスをご提供され続けられることをお祈り申しあげます。