コーヒー豆のふくらみ、味わいの強さについて

初めてご来店のお客様にごくまれにですが、次のようなご指摘をいただくことがございます。

そしてごくまれと書かせていただきましたが、高品質なスペシャルティコーヒーのユニークなフレーバーを発揮させる努力をする中で、ご同業の多くの方が経験することでもあると思います。

味の世界はお客様の嗜好が全てという部分もあり、これらのご感想の正誤はないのですが、スペシャルティコーヒーを扱う努力を継続している者にとって、こういった誤解は非常に残念であり、悔しいことでもありますので、これまでの自分自身のコーヒーに関する経験も含めて以下にまとめてみました。

 

・「豆が強くふくらまないねえ」「もしかして古いんじゃないの」

・「味がうすいねえ」「インパクトがないね」

似たようなご感想をお持ちの方がいらっしゃるかもしれませんが、誤解が非常に多いところでもありますので、一つづつお答えさせていただきます。

 

まず、「豆がふくらまないねえ」「もしかして古いんじゃないの」・・・ について

コーヒーは物理的に焙煎をより進めて(いわゆる深い焙煎)いくに従い、反応により豆の中で発生する炭酸ガスの量が多くなります。

つまり、同一素材、同一のローストプロファイル、同一焙煎日の深い焙煎と浅い焙煎とで比較した場合、浅い焙煎の方がお湯を注いだ際の膨らみが弱いということになります。

 

さて、では豆の膨らみを支配している炭酸ガスですが、炭酸ガス放出に伴う香気成分の発散は考えられますが、炭酸ガスそのものは無味無臭です。さらに、お湯かけ、泡になり(ふくらみ)やがてはじけ、その後ただちに大気解放されます。

つまり、ただちに単に膨らんだからおいしい、ふくらまないからおいしくないというのはどこか矛盾がありそうです。

鮮度についても同様です。膨らむから鮮度がいい、膨らまないから鮮度が悪いとは一概には言えません。ガスの発生量は、単に深い浅いの焙煎度に依存される部分が大きいからです。

比較するさまざまな要素の前提条件を揃えませんと、豆の膨らみのみによって鮮度の比較はできません。

*これも誤解が多いことですが、焙煎からの時間も新鮮であればあるほど味わいとして有利だとお考えの方が多いかもしれませんが、これは今回のテーマではありませんので割愛させていただきます。

 

お手にされたコーヒー豆が時間経過とともに、少しづつ炭酸ガスが抜けていき、だんだんと膨らみが弱くなるのは事実です。そして、それはコーヒー豆の品質の良し悪しは関係なく焙煎されたコーヒー豆すべてに起こります。

このコーヒー豆の特性は、品質の高い豆、低い豆にかかわらず、コーヒー豆を焙煎をした際に起こる化学反応としての物理的なものです。焙煎されたコーヒー豆(粉)は一定の保管期間内であれば、お湯をかけると必ずふくらみます。

お湯をかけた際の粉の膨らみは外見上非常に分かりやすいので、膨らみ加減でコーヒー豆の品質の良し悪しのご判断する方が多いかもしれませんが、これには注意が必要ということになります。(抽出方法そのものの良し悪しのことではありません)

 

「味がうすいねえ」「インパクトがないね」・・・ なぜそういった誤解が生じるのか 

スペシャルティコーヒー(高品質コーヒー)には基本的にいやな「重さ」「味わいの濁り」がありません。

これはコーヒー豆の評価用語でクリーンカップといいますが、スペシャルティコーヒーは味わいが透明で雑味がないからです。舌触りもなめらかです。

透明であるからこそ、その向こう側にある様々な魅惑的フレーバーを覚知することができ、楽しむことができます。

しかし、従来はスペシャルティコーヒーそのものがほとんど存在しなかったため、実際にはインパクトの強い雑味成分を「コク」と捉えていることが非常に多いと感じています。この雑味由来のコクは「強い」味わいなので、分かりやすいものです。

焦げたような、煙にも似た焙煎の強い香り、味わいを唯一無二のコーヒーの香りの芳しさであると信じて疑わない方も多くいらっしゃると思います。(間違いということではありません)

私の学生時代、新人社会人時代に全盛だった都内などにある高級喫茶店のコーヒーは、ほぼ例外なく深い焙煎を施していたと思います。ただし、今のようなスペシャルティコーヒーは存在すらしなかった。

つまり、深い焙煎に伴うあの強い香り、味わいこそが良いコーヒーの証だとご認識されている方にとって、スペシャルティコーヒーの味わいはかなり異なる感覚があるかもしれません。何を隠そう、私もかつてその一人でありました。

 

人間にとって刷り込み、経験とは怖いものです。

素晴らしいコーヒーの味わいは、味わいに透明感があり、軽やかで爽やかであるからです。(そして甘く、心地よい余韻が長く続く)

私はこの軽やかで爽やかな味わい(それに伴うユニークなフレーバー)こそが高品質コーヒーの重要な価値であると信じていますので、そういったコーヒー豆を専門に扱っておりますが、全く別の世界観のコーヒーとして深い焙煎を否定している訳ではありません。

弊店でも一般販売用として一種類だけは深い焙煎のコーヒー豆を常時扱っております。(あるいは、レストラン、カフェなど不特定多数の方が飲まれることが前提の卸用などは深めの焙煎を施す場合があります。)

ただ、ここでもう一歩話を進め、さらに品質を求めていきますと、味わいの透明感、雑味のなさに加え、フレーバー(香り、味わい)のユニークさが際立ったものになっていきます。

このユニークなフレーバーを生かそうと思いますと、適切なプロファイルで焙煎を進行させることと、そして結果的には、焙煎の深さはほどほどに抑える必要があると考えています。

ただし、素材(生豆)の品質が高さが前提であり、それがありませんと焙煎や抽出をどんなにがんばっても透明感やユニークなフレーバーはだせませんが。。

 

コーヒーは焙煎が深まるにつれ、コーヒー豆そのものに強い焙煎した香りがつき始めます。この香りは非常に強いもので、せっかくのユニークで素晴らしいフレーバーが結果として感じにくくなってしまいます。

フレーバーの個性を楽しむことは、スペシャルティコーヒーの大切な部分であり、焙煎度が浅い、深いというより、そのコーヒー豆が生来持った素晴らしいフレーバーが際立つポイントで焙煎を止めているというイメージです。

焙煎度そのものも、一定の基準をベースに色差計などを用いて数値化しない限りは、主観で浅いとか深いとか感じていることになります。

結果として、弊店の場合は極端に深い焙煎は商品構成上、多くないということですね。

再度申し上げますが、深い焙煎を否定している訳ではありませんし、全てのコーヒーを深く焙煎しない方がいいと申し上げている訳でもありません。

 

ユニークな味わいを持つ高品質なコーヒーの魅力を生かすにはどういった焙煎を施すことが最適なのか、、を考え行き着いた現時点での結論です。

(ただし、ミルク、生クリームなどを使用したアレンジコーヒー、コマーシャルコーヒー素材は前提にしていません。乳製品とコーヒーを合わせる場合は、まずは弊店で一つだけあるキュヴェという深い焙煎のものをお求めいただくことをお勧めします。スペシャルティコーヒーを抽出したそのものをストレートに味わうものを想定した内容です。)

 

お客様の好みは多種多様で、全ての方にご満足いただけないかもしれませんが、スペシャルティコーヒーの魅力を最大限お楽しみいただくために、以上の考え方のコーヒーの味わいが実現できるように努めています。

 

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